バイコヌール打ち上げツアー (2013/11/9~10)

7日目 モスクワ散策→帰国

ロシア最終日。
宇宙開発の聖地で過ごした日々がすでに夢のようです。
夜の飛行機まで時間はたっぷりあるので、日中はモスクワを観光して楽しむことにします。
ホテルを出ると「宇宙征服者のオベリスク」が朝日に照らされ、本当にロケットが飛んでいるように見えました。

ホテル最寄りの地下鉄ヴェーデンハー駅よりプロスペクト ミーラ駅で環状線に乗り換えコムソモーリスカヤ駅に到着。
地上に出るとそこはシベリア鉄道の起点ヤロスラブスキー駅なのでした。

ウラジオストクからモスクワまでユーラシア大陸を横断する世界最長路線であるシベリア鉄道。
航空機が発達するまではアジアからヨーロッパへ向かう最速の手段として多くの文人墨客が利用しています。
一本の鉄路が極東から遙かヨーロッパまで繋がっていると考えるとワクワクしてしまいますよね。

しかし、ウラジオからモスクワまでは6泊7日も掛かりますから、日々の社会生活を送るサラリーマンにとって全線制覇はなかなか難しいものです、約一週間風呂に入れないのも苦痛ですし。

と、言うことで、雰囲気だけでも味わいたくて2010年のゴールデンウィークにウラジオストクからハバロフスクまでオケアーン号に乗り一泊二日のプチシベ鉄を楽しんだのでした。(シベリア鉄道極東の旅参照)

それからあっという間に四年が経過。
たまたまモスクワにいるこのチャンスを逃す術はありません。
要するに起点と終点だけ制覇して満足してしまおうという計画です。

ロシアの長距離鉄道駅には基本的に改札が無いのでそのままシベリア鉄道のホームまで入っていきます。
するとありました! 0キロポストです!
ウラジオストクのオブジェと違って柵に囲われているため、一緒に写真を撮るのは困難な状況が残念。
とりあえずカメラに納めて、ウラジオストク~モスクワの似非シベ鉄制覇を達成したのでした。

また地下鉄に乗り、モスクワの中心部オホトニ・リャド駅へやってきました。
赤の広場やクレムリンが存在するロシアの顔とも言える場所です。

クレムリンのチケット売り場は混雑が激しく、個人がチケットを入手するのは難しいと聞いていたため、まずはチケット売り場に向かいます。
結果、並ぶこともなくあっさり買えてしまったので拍子抜けです、入場門から離れた売り場を使ったのが良かったみたい。

一安心したのでクレムリンの入場は後回しにして赤の広場に向かいます、しかし、この判断が間違いであったことを後で知ります。

クレムリンの城壁を1/3周ほどして赤の広場にやってきました、イベント設営のためか半分ほどに柵で仕切られておりあまり広さは感じられません。
それでも奥の方にはカラフルなタマネギ屋根が特徴的な聖ワシリイ大聖堂が見え、ステレオタイプなクレムリンの眺めにちょっと感激します。

まずはレーニン廟へ。
言わずと知れた社会主義の象徴とも言えるレーニンの遺体が安置されている施設です、ペレストロイカから四半世紀経過し、民主化?されたロシアの中にはレーニン廟の是非を問う声もあると聞きます。
いずれ非公開になる可能性もあるので、見られるときに見ておきたい所です。

レーニン廟へはカメラや携帯電話などの持ち込みは一切禁止です、付近に数カ所ある荷物預かり所に預けて身一つで見学することになります。
預かり所は混雑しますし、サイズや中身によって値段が変わる(PCや携帯電話が入っていると高い)ので、クレムリン界隈には手ぶらで来るのが得策です。

見学の列にしばらく並び、金属探知機とボディーチェックを受けレーニン廟へ進みます。
通路の城壁側面にはロシアに貢献した人たちの墓があり、歴代指導者の他コロリョフやガガーリンといった宇宙開発に関わった人々も埋葬されています。

レーニン廟の地下へ潜る階段を進むと薄暗い空間の中に上半身だけ柔らかなライトを当てられたレーニンの遺体がありました、いつ起き出してもおかしくないぐらい血色の良い顔つきです。
近代史の教科書で見た写真とまったく同じなのは当人だから当然か...
共産主義に興味は無いので特別な感情はありませんが、すごい保存技術だなと感心しました。
数人の警備が配置されたコの字型の通路をゆっくり巡って見学終了。
そのまま通路を出ると赤の広場です。

振り返ると大統領官邸の丸い屋根には国旗が立っており大統領がクレムリンに在席することを示していました。

プーチンのカリスマ性を一度は生で見てみたいですね。

ワシリスキー寺院を見学後、赤の広場正面にあるグム百貨店に立ち寄ります。
年季の入った外見とは裏腹にオシャレなブランドショップが入店し、私には縁遠い感じです。
ソチオリンピックを意識した装飾が多いのが印象的でした。

土産物屋などが建ち並ぶ商店街を進むと、ロシア道路起点の鋲が打ち込まれた門にたどり着きました。
鋲の上に立って後ろ向きにコインを投げると縁起が良いみたいです。

皆に習って自分もマネしますが、投げたコインの行き先にはそれを拾おうとする物乞い風のオバちゃんが待ち構えています。
必死に拾おうとする様はとてもシュールです、しかし一日中居れば意外と良い稼ぎになりそうな気もしますね。

赤の広場周辺の散策は満足したのでクレムリンに入場しようとクタフィヤ塔に向かうと、手荷物検査場からずっと続く待ち行列が出来ていました。
アレに並ぶと間違い無く1時間以上は掛かってしまいそうです。
チケットを買って安心しておりましたが、真っ先に入場しておけば良かったと反省するも後の祭り。
今回はクレムリンへの入場は諦め、次の予定を消化することを優先しました。

スマートフォンのGPSを頼りにクレムリンから歩くこと十数分、ノービィアルバート通り沿いにあるモスクワで一番大きいと言われる書店、ドム・クニーギにやってきました。

やはり本屋は文化の宝庫です、見て回るだけでも相当楽しいですね。
いくつかの書籍とチェブラーシカのDVDを購入。
本の単価が日本より安めだからといって迂闊に買い過ぎると、帰りの飛行機で重量オーバーしちゃうかもしれません。

その後、すぐそばにあるモスクワ市内最古の歩行者天国といわれるアルバート通りを散策します。
通りの左右にはレストランや土産屋などの商店が立ち並び、日本でいえば原宿の竹下通りみたいな雰囲気です。

似顔絵を描いてくれるストリートアーティストが居たりして、時間があれば描いて貰うのも面白そう。
いくつかのお店に入ってみたところ、マトリョーシカやホフロマ塗りといった定番みやげのほか、変T・ウシャンカ・ストールなどの衣類、バッジ・戦車帽といった旧共産・ミリタリーグッズまで売られていてなかなかカオスです。
せっかくなのでロシア伝統の陶器であるグジェリの砂糖壺を購入しました。
お店のオバちゃんは両手で握るぐらいの大きな物を薦めてきましたが、「にぇとにぇと、えーた ばーりしょえ! いぽーにや どーま まーりにきぃ ※」と、拙いロシア語で冗談を飛ばしつつ手頃なサイズのものを入手しました。
※「ダメダメ、これはデカイよ! 日本の家は小さいんだ。」ぐらいのつもり、正しいかはさておきとりあえず通じた。

次に向かうのは少し離れたところにある「中央軍事博物館」です。
軍事技術とロケット技術は切り離せませんし、日本にいると東側の兵器に触れる機会はほとんど無いので大変興味のあるところです。
ビブリオチエカ イメニ レニナ駅から地下鉄に乗り込みチスチェイエ プルドイ→スレテンスキー プリヴァルと乗換えドストエフスカヤにやってきました。

ドストエフスキーをテーマにした地下ホームの装飾は、美術館の一部だとウソを言っても疑われないことでしょう。

地下から地上に出ると方向感覚を失い少々戸惑いますが、スマホのGPSで方位を確認して歩くこと数分で中央軍事博物館が見えてきました

敷地外に展示されたモニュメントを尻目にさっそく博物館の中へ入ります。
ロシアの博物館にしては珍しく、入場料だけで撮影料は要らないみたいです。

モスクワはテロの脅威にさらされているためか、博物館の入り口には大抵金属探知機が設置されています。
それをくぐって入場しようとすると警備の男性に呼び止められました。
なにやら何しに来たのか聞いているようです、ロスコスモスのネックストラップをしていたのでそれに目を付けたみたい。
いや、デジカメをぶら下げるのに丁度良かったから流用してるだけなんですけど...
とりあえず「つーりずむ」とだけ答えるとあっさり通してくれました。

展示内容は小火器から重火器まで古今の東側兵器でいっぱいです。
たぶんマニアなら涎を垂らして喜ぶような内容なんでしょうね。
変わった物では撃墜したU2の残骸とか、突出した記録を持つ女性スナイパーのコーナーも有りました。
日本にゆかりのある遺品もいくらかありましたが、大半はドイツと激しい攻防を行った東部戦線の展示でした。

半地下の手荷物預け場所の近くにある扉から屋外に出ると航空機や戦車が多数展示されています。
あまり状態は良くなく、詰め込みすぎのため奥の方にある展示物はよく見えません。
柵で区切られていますが、子供達は展示物に乗ってはしゃいで遊具のようになっています。
いっそのこと柵を無くして開放しちゃえば良いのに。


しばらく屋外の展示を見ていると、空港に向かう時間が近づいてきました。
後ろ髪を引かれる思いですが、コスモスホテルで空港に行くドライバーと落ち合わねばなりません。
博物館を出てしばらく通り沿いを歩き、近くの停留所からプロスペクト ミーラ駅までトラムに乗ります。

そこから地下鉄でヴェーデンハーに戻りホテルへ到着、今更ですがだいぶモスクワの歩き方に慣れてきました。

朝早くから昼飯を食べずに歩き回ったので少々お疲れ気味です。
ロビーのイスに腰掛けてうつらうつらとしていると、自分の名前のプラカードを持ったドライバーが一直線にこちらにやってきました。
やはりアジア系は目立つみたいですね、モスクワは極東地域と違ってアジア系が少ないですから。
赤の広場は中国人だらけでしたけど。

ドライバーに連れられ車に乗り込みシェレメチェボ空港へ向かいます。
このドライバーさんクラクションを鳴らしてアグレッシブに車線変更するタイプです。
少々肝を冷やしましたが、おかげであっという間に空港に到着したのでした。
チップに添えて少し皮肉を込めて おーちん らーんにぃ。(とても早いね!)

荷物検査をして空港内に入り、1時間ほど待つと他のツアー参加者も到着しました。
免税店で買い物をしてお茶など飲みつつ時間を潰します。

そうこうしているうちに搭乗時間になり、アエロフロートのエアバスに乗ってモスクワを後にします。
どうやらJAXAの職員や若田飛行士のご家族も同じ飛行機に乗っている様子です。

ほぼ順調なフライトでしたが、成田への着陸間際はかなり揺れました。
機体に取りつけられたオンボードカメラの映像を見ると滑走路が大きく左右に傾いて危うい感じに見えます。
しかしロシアのパイロットは空軍出身で操縦の上手い人が多いと聞きます、心配するまでもなく軽くバウンドしただけで無事に日本へ降り立ったのでした。

日本に到着して安堵すると同時に、夢のようなロケット三昧の日々が終わり少々憂鬱でもあります。
あぁ、明日から仕事か・・・。

今回のバイコヌールツアーは、10名程の催行で多すぎず少なすぎずちょうどよい参加人数でした。
他国からの参加者はロシアの宇宙飛行士の娘さん1人だけでしたから、日本人ばかりの集団の中で肩身の狭い思いをさせてしまったかもしれません。
ロシア語に堪能な添乗員と解説の菊池さん、一般の参加者も専門的な知識を持つ職業の方が多く、一緒に行動していると色々なお話が聞けてとても楽しく参考になりました。
正直なところ、たいして知識を持っていないただの一般人である私のような者が参加するにはあまりにもスペシャルな内容で場違いだった気さえします。
改めてツアー同行の皆様とバイコヌールでご一緒したJAXAの職員、そのご家族に感謝いたします。


また機会があれば行きたいですね、バイコヌール!

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